2012年11月4日日曜日

愛なき不完全な備忘録 Nov 4, 2012―ブルースはどうやってみつける?

Oct 27
Nag Ar Juna × mitsume × JAPPERS / 3 BANDS JOINT RELEASE PARTY(Nag Ar Juna, ミツメ, JAPPERS, SUPER VHS @幡ヶ谷forestlimit)


 ミツメのライブを観てみたかったので行ってみた。予約は定数に達していたので、当日券を頼みに早めに幡ヶ谷へ向かった。forestlimitへ来るのは一年ぶりくらいだ(ホライズン山下宅配便のワンマン以来)。高速で行き交う車と排ガスに彩られた、まるでディストピアを現実化したかのような甲州街道沿いを左に折れると、飲み屋に紛れてforestlimitはある。オープンすると、あの狭いforestlimitは瞬く間に超満員となった。スカートの澤部渡さんがいたので「ファンです」と声をかけてみた。すると側にいた女の子も「私もです」と言った。澤部さんは最早インディ・ロック・スターである。
 ミツメ以外の他の三バンドは全く知らなかった。SUPER VHSはちょっとチルウェイヴっぽい気怠さを漂わせた今風エレポップ。JAPPERSはザ・ラーズのようなブリティッシュ・ロックやポップスの影響を隠そうとしないバンドだった。二組とも英語で歌っていたので、日本語で歌えばいいのに、と思った。

 ミツメのライブは始めドラムがもたっており、あの少し不安定な(しかしそれが魅力でもある)ボーカルとも相まって「大丈夫かな?」と心配になった。とは言え、傑作『eye』で完成された音をそのままライブで表現しており、演奏の完成度と密度は非常に高いと思った。1stからの曲はなく、全曲『eye』からだった。私としては、レコードとほとんど違わぬ演奏にライブバンドとして魅力を感じるかと言えば少し疑問だ。ただ、淡々と進んでいく演奏に仄かな熱情は確かに感じられたし、スリリングに絡み合う二本のギターのプレイにはワクワクした。
 疲れてしまったので、Nag Ar Junaの演奏の途中で帰ってしまった。外には澤部さんが立っていた。




 ミツメの『eye』は本当に傑作だと思う。シンプルなギターポップであった1stから一気に飛躍し、別次元の独自のサイケデリック・ロックを打ち立てている。「Disco」は1stの曲たちに近く、いわゆるネオアコ風ではある。が、ダブを独自に解釈しサイケデリックへと接続させた素晴らしい「春の日」をアルバムの一曲目へ持ってきたことは、ミツメの変化を宣言するためだろう。
 アルバム発売に先駆けて公開されていた「cider cider」は紛れも無い名曲だ。これを初めてsoundcloudで聴いたときは非常に驚いた。即かず離れず絡み合う二本のギターのミニマルなフレーズのダイナミックさ、キュートでスペイシーな音で鳴るシンセサイザー…ニュー・ウェイヴィだが今っぽさもひしひしと感じる。一瞬で虜になった。



 「fly me to the mars」のカセット(後に7インチ・シングル)に収録されていた「煙突」は別ヴァージョンになっている。『eye』についてはまた詳しくレビューしてみたい。


Oct 30
アルファヴィル(ジャン=リュック・ゴダール 1965)


 私の頭が悪いのかググって解説を読まなければ作品内の設定が理解できなかった。映像・編集はゴダール節全開。

Nov 3
武蔵大学 白雉祭(倉内太、キウイとパパイヤ、マンゴーズ、KETTLES、T.V.not january、ザ・なつやすみバンド、スカート、画家、俺はこんなもんじゃない、片想い、ズボンズ @武蔵大学江古田キャンパス)


 武蔵大学のライブイベント。上記の通り豪華な面子で、しかもフリーライブ。同じ江古田のプチロックとはライバルか? 今日もプチロックは開催されているが、行っていない。今年は一日も行かなかった。なんとなく。
 快晴だった。江古田駅を挟んで日芸とは反対側にある武蔵大学。大学の校舎は非常に綺麗で近代的だが、学園祭自体は人が少なく、大学生たちはなんともチャラい感じの者が多かった。それは少し悲しい感じを私に与えるものではあった。ライブ・ステージは地下のスタジオと野外のステージに分かれていた。この日観たのは、倉内太、キウイとパパイヤ、マンゴーズ、ザ・なつやすみバンド、スカート、片想い。俺はこんなもんじゃないは『2』を愛聴していたし、ライブを観たことがなかったので観たかったが、泣く泣く片想いを取った。画家も久しぶりに観たかったが、観なかった。

 一番手、地下のスタジオで倉内太さんを観た。三鷹おんがくのじかんで観た時と同じように黒いロングTシャツを破り、同じようにポエムを詠んだ。青春期の焦燥と恋愛にまつわるモヤモヤを激情にまかせてシャウトしながらも、フォーキーでブルージーでロックンロールなギタープレイは非常に丁寧。伴瀬朝彦さんや三輪二郎さん、牧野琢磨さんとのギターバトルが観てみたい。表現者としての芯が非常に強いというか、とにかく「人間力」のある人だ。言いすぎかもしれないが、まるで遠藤賢司みたいだ。変わった人である。トリックスターのよう。時にユーモラスに、時に激しく歌う。
 「ブルースがみつからない」という曲が最高だ。今はこの動画よりもずっと洗練された演奏をする。


 それから外のステージでキウイとパパイヤ、マンゴーズの素晴らしい演奏に酔いしれた。晴れ渡った空のもと、野外で聴くには最高だった。ボーカルの方の民謡風の節回しやレゲエのビートを重たく刻むドラムの素晴らしさに感動した。またライブへ行ってみたい。物販で「東京の演奏」を主催し、とんちれこーどを手伝っているこっちゃんに久しぶりに会った。以前より元気ハツラツとしていたので良かった。ceroの柳さんの絵があしらわれた片想いのTシャツを買った。

 野外ステージのトリは片想い。六月のoono yuukiとの対バン以来に観た。サックスの遠藤里美さんがおらず、NRQの牧野琢磨さんがギターで参加していた。
 演奏が始まって驚いたのは、演奏が非常にタイトで引き締まっていることだった。もともとキメるところはしっかりとキメるタイトさはあったものの、そこにルーズな感覚が紛れ込んでいた。以前までの片想いはちょっとスカスカで、ちょっと演奏にズレがあって、悪い言い方をすればちょっぴり下手で、それがなんともキュートでユーモラスで楽しい気持ちにさせてくれるものだった。だが、この日の片想いは恐ろしいほどタイトなファンク・バンドだった。
 「やったことのない曲を練習してきたので、それをやります」と片岡シンさんが言ったので、「新曲!?」とワクワクしてて始まったのはなんとスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「ランニン・アウェイ」。驚いた。そしてこの時の素晴らしい演奏が決定的に片想いの演奏の変化を物語っていたと思う。オラリーさんの歌は堂々たるものだったし、あだちさんのドラムと伴瀬さんのベースが打ち出すビートは骨太で身体の芯にまで響いた。本当に感動した。完全に片想いの曲だった。
 とにかくこの日の片想いはすごかった。夕闇の中、どこからともなくものすごく多くの観客がステージの周りに集まりだし、歓声をあげ、笑い、踊り、手拍子していた。違うバンドかと思うほどファンキーで格好いい片想いを聴きながら。いつも通りのちょっとグダグダしたMCとも寸劇ともつかないものを挟みながら(この日はイッシーさんが全然喋らなかったけれど)、たくさんの聴衆を、たぶん片想いを知らない人たちも含めて虜にしていた。本当、モンスターバンド。
 曲は何をやったのかすっかり忘れてしまった。たしか、「東京フェアウェル」「カラマルユニオン」「踊れ! 洗濯機」「山の方から来てくれればいいのに」をやっていたと思う。もちろん「踊る理由」もやった(僕の好きな「V.I.P」や「管によせて」「すべてを」はやらなかった)。
 そういえば、「カラマルユニオン」という曲名はアキ・カウリスマキの「カラマリ・ユニオン」にちなんでいるんだろうな。良い曲。

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